不迷失的羊 まだまだ移行中・・・。 忍者ブログ
徒然なるままに、妄想。
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続HW恋物語4

「受付、人混み合ってきてるけど・・・」
黒崎君と呼ばれた、まだあどけなさの残る青年は少し眉を寄せ女性職員に話しかけながらちらりと藍染らを見遣る。
「・・・ごめんなさい。でもこの人達・・・」
青年に申し訳なさそうに謝罪しながらも、女性は相変わらず険しい目付きで藍染らを睨み据えた。
「またか・・・」
「多分・・・、いえ、100%間違いないわ」
呆れた表情を浮かべ溜め息混じりに短く言葉を吐き出す青年に女性は力強く言い切る。
「・・・ならここは俺が対応するから。七緒さんは受付に戻ってくれるか?」
「でも・・・」
「大丈夫だから。ほら、虎徹さんが受付ひとりでテンパッてるから」
青年の視線を辿れば、背の高い気弱げな女性職員が非常に頼り気ない目をして必死に眼鏡の女性職員に『早く戻ってきてください!』と訴えていた。それを見た女性職員が小さく溜め気を吐き出して青年を心配そうに見詰める。
「・・・私は戻るけど、なんかあったら卯ノ花さんに・・・」
「大丈夫だって。ほんと皆心配性だな」
苦笑に近い微笑を青年が浮かべる。笑むと、ぶきらぼうで無愛想な青年の面立ちが柔らかくなり、その微笑にはどこか見るものをはっと惹き付けるなにかがあって、藍染は僅かに目を瞠った。青年が大丈夫だと言っても表情を曇らせたままだった女性職員は、もう一度青年に促されると、藍染らに不審いっぱいの険悪な視線を向けながらも渋々と自分の持ち場へと戻っていった。
「えっと・・・、本日はどのような用件で?」
女性が受付に戻ったのを確認した青年が、僅かに眉を顰めた顔付きで藍染へと問いかけてくる。
「ハローワークに茶ぁ飲みに来るはずないやろ。お仕事探しに来たったんや」
「3人ともですか?」
「ボクはちゃあんと働いとるわ。これでも副社長やで?お仕事探してんのは、こっちの顔色悪いウルキオラや」
「・・・俺は無職だ」
怪訝に訊いてくる青年に、市丸とウルキオラが平然と嘘を並べる。
「なら離職票お持ちですよね?お出しいただけますか?あと身分証なんですが、そちらに記載されてある住所は現住所と同じでしょうか。それと本日本人様名義の預金通帳と印鑑はお持ちいただいてますか?」
「「・・・・・・・・・」」
すらすらと立石に水の如く質問を浴びせかけてくる青年に、そんなに必要なものがあるとは思いもよらなかった市丸とウルキオラは沈黙を余儀なくされる。元よりある筈のない離職票はともかく、其の他のものに至ってもなにひとつ持ち合わせていないのでは、どこからどう見たって怪しいだろう。決まり悪げに互いの顔を見合わせる2人の横では、僅かに目を眇めながら藍染がしげしげと青年のネームプレートを凝視していた。
(『職業安定課・黒崎』か・・・。グリムジョーの相手が確かK・Iだから、彼も当てはまるな。彼は窓口人員か?その前に噂の20番窓口の担当職員は固定制だろうか、それともローテーション制だろうか・・・)
脳内であれやこれと思考を巡らしながら藍染はネームプレートを見詰めている。男が自分のネームプレートをまじまじと見詰めているのに気付いた青年がはっきりと不快そうに眉を顰めた。
「私のな・・・」
「黒崎君」
低い声で言う青年の台詞を、端整な顔に似非っぽい笑みを浮かべた男の穏やかな声が無遠慮に遮る。男の腹でなにか企んでそうな雰囲気や無駄に艶のある声音や意味深などことなく妖しい眼差しがなんだか妙に癪に障り、一護はますます眉間の皺を深くした。
「・・・なんでしょうか」
「君の下の名前を教えてもらえるだろうか」
「必要性を感じませんが」
温厚に言葉を重ねてくる男に一護は素っ気無い口調でぴしゃりと拒絶の意を示した。その事務的なものを越えた素気無い態度に市丸とウルキオラが感心したように一護を見遣った。
「なかなかガードが固いようだ」
「・・・用件を教えていただけますか?私も暇ではないので」
男が苦笑交じりに言うのを無視して冷たく一護が言い放つ。
とあるマニアックな雑誌に何故か一護とグリムジョーの記事が載り、目撃者の多かったその一連の出来事は巷で密かに本人達の与り知らぬところで盛り上がり、一護とグリムジョーは俄かに時の人となっていた。この情報化社会にあって、本名や顔写真がまだ世間に流れ出ていないのは幸いだが(卯ノ花が阻止しているという噂もあるが一護は何故か怖くていまだ確かめられずにいる)、好奇心旺盛な暇人どもが話のネタにと職場に覗きにやって来ることが増え、仕事の弊害になる彼らに職員達は大いに迷惑しているのだ。そんな迷惑な輩は、いつもは七緒が総合受付で悉く見抜き容赦ない辛辣な言葉とキツイ眼差しで追い返すのだが、このたびの来訪者はなかなかツワモノらしい。
「その態度はどうだろう。君達の給料は私達が納めている税金から支払われていると思ったが、私の勘違いかな?」
薄っぺらで酷薄そうな笑みを口許に刻みながらの藍染の台詞に、「いっつも税金ちょろまかしとる人が言うセリフやないな」と市丸がぼそりとツッコミを入れる。
「嫌味は結構です。ここは求職者が真面目に仕事を探す場なので、関係のない方は早々にお引取り願いたいのですが」
醒めきった口調と表情でぴしゃりと言い放つ一護に、「藍染社長に、こないな物言いする子がおるやなんて・・・」と市丸は素直に驚き目を瞠る。ウルキオラも無表情ながらも興味深げな眼差しで一護を見ている。
数秒か、十数秒の間。藍染と一護はじっとお互いを凝視していたが、ふいに藍染可笑しげな笑みを零した為沈黙が破られる。
「君は面白い子だね」
くっくと笑みを押し殺しながらくぐもった声で言う藍染に、一護はあからさまに不愉快といった顔つきになる。
「・・・用がないようなのでお帰り頂きたいのですが」
「用はあるよ」
一護の低い刺々しさを隠すこともない台詞に対し、藍染は悠然とした何処か含みのある笑みを口の端にのぼらせた。艶を孕んだ声音はひどく楽しそうだった。
「私は君に会いに来たんだよ」



・・・藍氏、相当嫌がられてるっぽいですな・・・。

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