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続HW恋物語2
「なんやえらい暑いなぁ。冷房効いてへんのとちゃうか?ほんま市民に優しゅうない交通機関やわ。せやからタクシーで行こて言うたのに」
「喧しいぞ、ギン。私はあの車内のにおいが駄目なんだ。知っているだろう」
「案外繊細ですからね」
駅前から市役所行きのバスに乗った藍染創業の社長・副社長・経理はバスの一番後ろの席を陣取り一路ハローワークを目指していた。見目はいいものの、どことなく胡散臭い男と狐っぽい男とひどく顔色の悪い男の3人連れは無駄に車内で目立っていた。
「社長、次の停留所です」
「ギン、ブザーを押せ」
「なしてボク?」
「お前が端の席に座っているからだ」
「副社長、早くしないと行き過ぎてしまいます」
「ウルキオラ、バス代はいくらだ?」
「1人260円ですから、3人で780円です」
「ギン、小銭は持ってるな。早く出せ」
「せやからなしてボク?ボクの小銭は自販機でジュース買う為のもんやのに」
「お前は甘いものを摂り過ぎだ。糖尿になるぞ」
「停留所が見えました」
駅から微妙に空調の効いていないバスに乗ること20分弱、3人は目的地までたどり着いた。目指すハローワークは停留所から5分ほど通りを真っ直ぐに歩いたところにある。
「あれ?」
暑い暑いと相変わらず喚きながら歩く市丸がふと何かに気付いたような顔になる。
「そおいや、藍染社長。グリムジョーは今は働いてんのやろ?ハローワーク行ってもおらんやん」
全くもって今更な質問に藍染が呆れ果てた眼差しで副社長を見遣る。
「お前はあの記事の何処を読んでいたんだ。グリムジョーはいつも仕事終わりにハローワーク勤務の恋人を迎えに行くという証言が載っていただろう。ハローワークで待っていれば嫌でも会うさ」
「いい年した男のする行動じゃないですが」
藍染の隣のウルキオラが醒めきった口調と声音でぼそりと呟く。
「けどあのグリムジョーに恋人やなんて未だに信じれんわ。しかも男同士やろ。更に相手はお堅い公務員。ほんま世の中は不思議なことばっかりや」
「あの堅物のグリムジョーが惚れ込んだという人物に是非とも会いたいものだ」
薄っすらと酷薄な笑みをのせる藍染を今度は市丸が呆れた表情で見遣る。
「やっぱそっちが目的やったんですね。グリムジョーにお祝いやなんてオカシイ思うたわ」
「気付くのが遅いです、副社長」
「一言多いで、ウルキオラ。・・・やけど会うてどないしはるんです?男なんかに会うてもなんもオモロイことないですやん」
「充分に面白いじゃないか」
つまらなそうに言う市丸に藍染が心外だとでも言いたげな表情で返す。そうやって無駄な会話をしながら歩いているとウルキオラがふいに足を止めた。
「此処ですね」
藍染らの目の前には木々に囲まれたひっそりとした薄茶色の建物。少しばかり汚れた標識には『空座市公共職業安定所』と書かれてある。
「さて・・・」
其れを見た藍染はひどく楽しげな笑みを浮かべて、建物の中へ足取り軽く入っていった。
・・・藍氏はタクシーのあのにおいが駄目なんだよ。