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これで続きをこっちに書けそうだ。
続HW恋物語5
「・・・・・・」
男の台詞に一護は愛想の欠片もない憮然とした面持ちになる。なぜだかわからないがこの腹黒そうな男の言葉ひとつひとつ表情ひとつひとつが一護をやけに不快にさせる。
「お客さ・・・」
「藍染だよ」
冷め切った表情の一護が苦々しげに口を開けば、藍染と名乗った男は遠慮なく台詞を遮りにっこりとうそ臭い微笑を浮かべた。そのどこかで聞き覚えのある名前に一護は思わず眉を顰めた。
「あいぜん・・・」
知らず呟きを洩らす一護を藍染が長身を屈めながら嬉しそうに覗き込む。
「呼んでもらうなら下の名前の方がいいな」
「は?」
「惣右介だよ。そう呼んでくれ給え」
「・・・・・・、この人どこか悪いんですか?」
どこか芝居がかった藍染の台詞に、一護はこれは話が出来ない奴だと早々に見切りをつけ、藍染の隣でぼけっとしている狐面の男に胡乱げな視線を送った。
「性格はやや難ありやけど、他はいたって優秀なお人やで?」
一護の問いに、狐面の男はにたりとした感じの悪い笑みを顔にくっ付けて一護を見遣った。その笑みは眼鏡の男の笑みを同様、一護を不快にした。理由は説明できないからおそらく生理的に合わないのだろうと一護は深く皺の刻まれた眉間の下で考えた。
「その優秀な私でも恋という圧倒的な情熱の前ではただの無力なひとりの人間に過ぎないよ。君はどうだい?黒崎君」
「とりあえず用件を確認できないので本日はお引取り下さい。そこの顔色の悪い貴方も、今度来る時は離職票と身分証と通帳と印鑑を持ってきてください。でないと、なんの手続きも出来ませんから」
さらりと藍染の台詞を無視した一護はぞんざいな口調で言い捨てると、そのまま踵を返そうとする。が、踏み出した足はそれ以上前に進まない。
「・・・・・・離していただけますか?」
「何故?」
いつの間にか藍染の手がしっかりと一護の腕を掴んでいたのである。一護の眉間にぴきと青筋が立つ。
「藍染さん」
「惣右介だよ」
「藍染さん。手を離してください。私は忙しいんですよ」
微かに片頬を引き攣らせながら一護が目を眇めながら藍染を見据える。ちらりと時計を見ればもうすぐ終業時刻。こんなところでワケの分からない怪しさ大爆発の男の相手をしている暇はない。グリムジョーが迎えに来るまでに一護にはやらなければならない仕事が山ほどあるのだ。
(・・・ん?)
ふと何かが頭の片隅に引っ掛かって、一護は振り向き藍染のどう見ても似非っぽい微笑をじっと凝視した。
「藍染さん、貴方社長ですか?」
「そうだが?」
「ちなみに僕は副社長やでv」
「それは先程伺いました」
うきうきと口を挟んできた狐面の男の台詞を一護はばっさりと斬り捨てる。
「・・・もしかして、会社は藍染創業ですか?」
「私の会社を知っているのかい?光栄だな」
慎重に問う一護に藍染はくすりと無駄に艶めいた笑みを浮かべた。藍染の返答を聞いた一護は険しい顔で口を噤む。
(全部が嘘っぽい腹黒そうな社長。何考えてるか判らない狐面の副社長。無表情の顔色の悪い寡黙なのに毒舌な同僚・・・。間違いねえ・・・)
3人を見渡しながら一護は内心で大仰な溜め息をついた。いつだったかグリムジョーに聞いたまんまだ。一護の顔が今にも舌打ちしそうに、苦々しげに歪められる。もう一秒でも早くここから消え去って欲しいが、このしつこそうな男どもをどうやって追い返したらいいだろうかと、藍染にしっかりと掴まれたままの自分の腕に目を遣った一護の前にすっと黒い影が過ぎった。次の瞬間ぴしゃりと乾いた音が一護の耳に届く。
「誰の許可を得て黒崎さんの腕に触ってらっしゃいますの?」
穏やかな中に底知れぬ畏怖を感じさせる声。
藍染の手を一護の腕から叩き落とした姿勢のまま、卯ノ花がにっこりと微笑んでいた。
・・・卯ノ花最強伝説。